カリキュラム / 第4章 拡張と借用 応用
二次ドミナント ― “帰りたい力”を好きな場所に増設する
キーの外から音をひとつ借りて、狙ったコードへの“帰りたい力”を新しく作る。進行に寄り道感とドラマが生まれる。
前回、G7 から C へ帰りたがる強い引力、ドミナントモーション を学びました。あの「次へ帰りたい」という力は、進行を前へ押し出すエンジンでしたね。ここで、ちょっと大胆な発想をしてみます。あの引力を、ホーム(C)だけでなく 好きなコードの手前にも作れたら、進行はもっと自由に、もっとドラマチックになるはずです。それを叶えるのが、今回の 二次ドミナント(セカンダリードミナント) です。
ホーム以外のコードを「仮のホーム」に見立てる
ドミナントモーションは、本来「V7 → I(ホーム)」という一本道の力でした。でも、考え方を少しずらしてみましょう。キーの中にあるコードのどれか一つを、一瞬だけ “仮のホーム” とみなすのです。仮のホームと決めたら、その手前に、そこへ帰りたがる専用のドミナントを置ける。これが二次ドミナントの正体です。
記号では V7/○(マルへ向かうV7)と書きます。たとえば「G(V)へ向かうドミナント」なら V7/V、「Am(vi)へ向かう」なら V7/vi、という具合です。
ここが大事:二次ドミナントは、新しい難しい理論ではありません。前回のドミナントモーションを、ホーム以外の目的地にも“出張”させているだけです。「V7 → I」という関係を、狙ったコードの手前で小さく作り直している、と捉えてください。
作り方は「5度上でドミナント7thを作る」だけ
やることはとてもシンプルです。向かいたいコードを決めたら、その 5度上 の音をルートにして、ドミナント7th を組み立てる。それだけです。
| 向かう先 | 5度上 | 二次ドミナント | 現れるキー外の音 |
|---|---|---|---|
| G(V) | D | D7(V7/V) | F# |
| Am(vi) | E | E7(V7/vi) | G# |
| Dm(ii) | A | A7(V7/ii) | C# |
表を見ると、どの二次ドミナントにも必ず キーにない音(♯のついた音) が1つまぎれ込んでいるのが分かります。Cメジャーには本来ない「F#」や「G#」。この“よそ者”の音こそが主役で、ハッとする彩りと、目的コードへの強い引力を同時に生み出します。
つまずきポイント:「Dm ではなく D7」というところで混乱しがちです。Cメジャーの中に元からいるのは Dm(レ・ファ・ラ)。でも二次ドミナントに必要なのは、帰りたい力を持つ D7(レ・ファ#・ラ・ド)。マイナーのままでは“よそ者”の音(F#)が出ず、引力が生まれません。ここで一度キーの外へ踏み出すのがポイントです。
音で確かめると、ドラマがよく分かる
理屈だけでは実感しにくいので、耳で確かめましょう。「音で確認しよう」で D7 → G(V7/V → V)を続けて鳴らしてみてください。D7 の中の F# が、まるでGへ吸い込まれるように解決していくのが聴き取れます。ふつうに Dm から G へ進むより、明らかに“ため”と“着地”のドラマが強くなります。E7 → Am も同じ仕組みで、こちらは切ない到着になります。
まとめ
向かいたいコードを仮のホームに見立て、その5度上にドミナント7thを置く。すると、キー外の“よそ者”の音が寄り道感と強い推進力を連れてきてくれる。これが二次ドミナントです。じつはこれ、キー外の音を一瞬だけ借りてくる 借用 の入り口でもあります。次のレッスンでは、音だけでなく コードそのものを別の調から借りてくる パラレル・マイナーへ進みます。
🔊 音で確認しよう
ボタンをタップすると音が鳴ります。理屈と響きは、セットで覚えるのがいちばんの近道です。
QUIZ理解度チェック
習ったことを3問で確認しましょう。まちがえても解説ですぐ復習できます。
Q1.二次ドミナントを、いちばん近い言葉で説明するとどれですか?
Q2.Cメジャーキーで「G(V)へ向かう二次ドミナント」はどれですか?
Q3.二次ドミナントが進行にもたらす効果として、いちばん近いものはどれですか?