カリキュラム / 第7章 作曲実践 応用

ディグリー耳コピ ― 好きな曲を度数で聴く

作曲力がいちばん伸びる練習は、好きな曲の進行を度数(ディグリー)で言い当てること。4ステップで骨格を聴き取る技術。

前回は、曲の入口と出口の設計を学びました。ここまでで、進行を「作る」道具はひととおりそろっています。この章の締めに向けて、今回は視点を変えましょう。作曲力がいちばん伸びる練習は、じつは好きな曲の進行を、自分の耳で**度数(ディグリー)**として言い当てられるようになることなのです。

なぜ「度数」で聴くのか

コード名そのもの(Cとか Fとか)を丸暗記しても、キーが変われば通用しません。でも「I→V→vi→IV」という度数の骨格でとらえておけば、どのキーの曲にもそのまま当てはまり、自分の曲へ移植できます。度数はキーに縛られない「進行の形」だからです。耳コピのゴールは、この形を聞き取ることにあります。

4つのステップで聴き取る

順番に追えば、初めての曲でも骨格が見えてきます。

  1. ホーム(I)を探す。曲が「終わった」と感じる響きの瞬間、その落ち着く音がIです。サビの最後や曲の終わりに、耳をすませましょう。
  2. ベースを追う。いちばん低い音だけを口ずさみます。ベースはコードのルート(根っこ)であることが多く、進行の背骨がそのまま見えてきます。
  3. 機能で当たりをつける。「落ち着く=トニック」「開ける=サブドミナント」「帰りたそう=ドミナント」の3分類で、まず大づかみにします。
  4. 定番パターンと照合する。王道進行・カノン・小室・丸サ・ポップパンク……これまで出会った“指紋”と照らし合わせます。ぴったり一致しなくても「王道進行の変形だ」と分かれば十分です。

ここが大事:全部の音を完璧に当てる必要はありません。度数の骨格さえつかめれば、細かい装飾は後から足せます。まずは背骨を、ざっくりと。

音で確認しよう ― 耳を鍛える3つの聴き取り

今回の主役は、聴き取りクイズです。「音で確認しよう」では、まずホーム(I)の感じを聴いて、最後の和音の「帰ってきた」安心感を体に覚えさせてください。次にベースだけを追う練習で、低い音の動き(ド→ソ→ラ→ファ)を口ずさんでみましょう。最後に王道進行を聴いて、あの“指紋”の手ざわりを確かめます。

つまずきポイント:ベースの音は、コードの中でいちばん聞き取りやすい手がかりです。最初はメロディにつられて迷いますが、意識して「いちばん低い音」だけを追うと、ぐっと聴きやすくなります。

まとめ

耳コピは、ホーム探し→ベース追い→機能→定番照合の4ステップ。度数はキーに依存しない「形」なので、聴き取れれば、キーが違っても自分の曲にそのまま活かせます。いよいよ次は、コース最後のレッスン。同じメロディにコードを当て直すリハーモナイズで、この旅を締めくくりましょう。

🔊 音で確認しよう

ボタンをタップすると音が鳴ります。理屈と響きは、セットで覚えるのがいちばんの近道です。

QUIZ理解度チェック

習ったことを3問で確認しましょう。まちがえても解説ですぐ復習できます。

Q1.耳コピを始めるとき、いちばん最初にやるべきことは?

解説:度数はすべてホーム(I)を基準に決まるので、まず基準点であるIを見つけるのが第一歩です。サビの最後や曲の終わりの、落ち着く響きが手がかり。全コードやテンポ、歌詞から始めても、基準がないままでは度数に翻訳できません。

Q2.耳コピでまず「ベース(いちばん低い音)」を追うと、なぜ有利なのですか?

解説:ベースはコードのルートを鳴らしていることが多く、その動きを追うだけで進行の背骨がそのまま浮かび上がります。ベースはメロディとは別の動きをすることが多く、むしろコードの土台と深く結びついた音。だから最優先で追う価値があります。

Q3.コードを「Cや F」ではなく「度数(I や IV)」で聴き取ると、どんな得がありますか?

解説:度数はキーに縛られない「進行の形」なので、原曲がどのキーでも、自分の曲のキーへそっくり移し替えられます。特定のキー専用になるのは、むしろコード名で丸暗記したとき。度数化は絶対音感とは別の技術で、コードの種類も変わりません。

EAR耳でチェック

音を聴いて答えるクイズです。何度でも再生できます。目をつぶって聴くと、響きの違いに集中できますよ。

Q1.いま鳴った定番進行は、どれですか?

解説:マイナーの vi(Am)から始まり、IV→V→I とのぼって最後に明るいトニックへ着地する小室進行です。王道進行は IV から始まって vi で切なく終わり、I→V→vi→IV は明るい I から始まります。出だしが暗いか明るいかが、最初の分かれ目です。

Q2.いま鳴ったのは、何進行の冒頭ですか?

解説:明るい I(C)から始まり、V→vi→iii とベースが少しずつ下っていくカノン進行の冒頭です。小室進行なら出だしはマイナーの vi。頭が明るいトニックで、そこからじわじわ下降していく足どりが、カノンの“指紋”です。

Q3.いま鳴った終止は、どれですか?

解説:F(IV)の真ん中の音がラ→ラ♭へ半音下がって Fm(IVm)になり、そこから I へ着地する“泣き”の終止です。IV→V→I ならソの和音を経由し、偽終止なら I へ帰らず vi へすれ違います。真ん中の音がそっと半音下がる瞬間が聴きどころです。

BUILD進行を組み立てよう

コードをタップして順番に並べ、進行を完成させましょう。並べた進行は「▶ 聴いてみる」でいつでも試聴できます。響きを確かめながら組むのが作曲の第一歩です。

✓ クリア済み耳コピした“カノン風の下降”を再現しよう(C → G/B → Am → Am7/G → F)

ヒント:ベースがド→シ→ラ→ソ→ファと、階段状に一段ずつ下りていく

解説:耳コピのコツは、まずベースを追うこと。この進行はベースがド→シ→ラ→ソ→ファと階段状に下りていくので、G/B や Am7/G のようなスラッシュコードで“下る足どり”を作っています。上のコードは C→G→Am→F と動きますが、聴きどころは滑らかに降りていく最低音です。