カリキュラム / 第7章 作曲実践 応用

リハーモナイズ入門 ― 同じメロディを塗り替える

メロディはそのまま、下のコードだけを当て直す。代理・テンション・通り道で響きを塗り替える、作曲とアレンジの必須技術。

前回は、好きな曲の進行を度数で聴き取る“耳”を鍛えました。いよいよ最後のレッスンです。ここでは、いちど作った進行を 塗り替える 技術、リハーモナイズ(略してリハモ)を学びます。メロディはそのまま、下のコードだけを当て直す——作曲でもアレンジでも欠かせない、いわば“味付け直し”の技です。

リハーモナイズって?

リハーモナイズとは、メロディを1音も変えずに、その下のコードだけを別のコードへ差し替えること。同じ鼻歌でも、支えるコードが変われば、切なくも、おしゃれにも、荘厳にもなります。「音で確認しよう」で、まずは素朴な C → F → G → C を聴いておいてください。これを出発点に、少しずつ塗り替えていきます。

手順1 ― 代理コードで置き換える

いちばん手軽なのが 代理コード。あるコードと構成音を2〜3音ぶん共有する“親戚”に入れ替える方法です。トニック I(C=C・E・G)の代理は vi(Am=A・C・E)や iii(Em)。サブドミナント IV(F)の代理は ii(Dm)。共通音が芯を保つので、役割はそのままに、響きの色だけが変わります。C → F → G → C を Am → Dm → G → C にするだけで、ぐっと大人びます。

手順2 ― セブンス・テンションで上質に

次に、三和音を セブンスやテンション でふくらませます。C を Cmaj7 や Cmaj9 に、G を G7 や G13 に。音を1〜2音足すだけで、平面だった響きに奥行きと“色”が生まれます。さきほどの進行を Am7 → Dm7 → G13 → Cmaj9 にしてみましょう。「音で確認しよう」でもとの C → F → G → C と聴き比べると、骨格は同じなのに、まるで別の曲のように洗練されて聞こえるはずです。

手順3 ― “通り道”を増やす

最後は、コードとコードの すき間 を埋める技。二次ドミナント、裏コード、そして パッシングディミニッシュ を挟むと、なめらかな“通り道”ができます。たとえば C → Dm7 のあいだに C#dim7 を差し込むと、ベースが C → C# → D と半音で歩き、都会的な色気が漂います。「音で確認しよう」でこの通り道入りを鳴らし、半音でつながる滑らかさを味わってください。

つまずきポイント:リハモは、複雑にすればえらいわけではありません。判断基準はいつも「メロディが映えるか」。テンションを盛りすぎてメロディが埋もれてしまったら本末転倒です。1か所変えるごとに鳴らし、耳が「気持ちいい」と言う手前で止める。それが、上品なリハモのコツです。

コースを終えて ― ここからが作曲

おつかれさまでした。第1章で音の名前と度数からはじめ、コードの作り方、機能と終止、定番進行、コードの拡張と借用、ポップスの技法、そして作曲実践まで、ずいぶん長い旅をここまで歩いてきました。

学んだ理論は、正解を縛るルールではなく、あなたの手の中の 道具箱 です。終止で句読点を打ち、定番進行で背骨を作り、代理やテンションで色を塗る——どれをいつ使うかは、あなたの耳が決めます。

さあ、ここからが本当の作曲です。トップページからアクセスできる 進行ラボ で、コードを自由に並べ、鳴らし、確かめてみてください。理論はもう、あなたの味方です。よい音楽の旅を。

🔊 音で確認しよう

ボタンをタップすると音が鳴ります。理屈と響きは、セットで覚えるのがいちばんの近道です。

QUIZ理解度チェック

習ったことを3問で確認しましょう。まちがえても解説ですぐ復習できます。

Q1.リハーモナイズ(リハモ)とは、どんな作業のこと?

解説:リハモは、メロディを1音も変えずに、支えるコードだけを差し替える技術です。メロディを書き換えるのは作曲そのもの、テンポ変更や移調はまた別の操作で、いずれもリハーモナイズではありません。

Q2.I(C)の代わりに vi(Am)を置き換えられるのは、なぜ?

解説:C は C・E・G、Am は A・C・E で、C と E の2音を共有します。共通音が響きの芯を保つから、役割を大きく崩さず入れ替えられるのです。ルートは違いますし、無制限に置き換えられるわけでも、vi のほうが明るいわけでもありません。

Q3.リハーモナイズで、いちばん大切な判断基準は?

解説:リハモの目的は響きを飾ることではなく、メロディを引き立てることです。複雑さやテンションの数は目的ではありません。凝りすぎてメロディが埋もれたら本末転倒。耳が気持ちいいと感じるかを基準にします。

EAR耳でチェック

音を聴いて答えるクイズです。何度でも再生できます。目をつぶって聴くと、響きの違いに集中できますよ。

Q1.こちらの進行は、次のどちら?

解説:マイナーの Am7 から切なく始まり、各コードにテンションの“にごり”と奥行きがあります。素朴な C→F→G→C は明るいメジャーのトライアドが続き、もっとすっきり澄んで聞こえます。響きの色数の多さが聴き分けのポイントです。

BUILD進行を組み立てよう

コードをタップして順番に並べ、進行を完成させましょう。並べた進行は「▶ 聴いてみる」でいつでも試聴できます。響きを確かめながら組むのが作曲の第一歩です。

✓ クリア済み「C→F→G→C」をリハーモナイズした、おしゃれな響きの進行に並べよう

ヒント:I の代理は vi(Am7)、IV の代理は ii(Dm7)。ドミナントとトニックはテンションで色づけ

解説:I→IV→V→I の骨格はそのまま、I を代理の vi(Am7)に、IV を代理の ii(Dm7)に置き換え、V と I をテンション(G13・Cmaj9)で色づけしました。共通音が芯を保つので、進行の役割は変わらないのに、響きだけが洗練されます。