カリキュラム / 第5章 コード種の網羅 応用

テンションの続き ― 11th・13thと“濁り”の避け方

9thの上にさらに積む11thと13th。テンションは何でも足せばよいのではなく、コードの種類ごとに“相性”がある。第5章の総まとめつき。

前回、コードのさらに上へ 9th を積んで、響きに“色”を足すことを覚えました。では、その 9th の上に、さらに音を積み重ねたらどうなるでしょう。生まれるのが 11th13th です。ただし今回いちばん大事なのは、「テンションは、積めば積むほど良いわけではない」という感覚。コードの種類によって、乗せて心地よい音と、濁ってしまう音があるのです。

9thの上に積む ― 11thと13th

考え方は 9th とまったく同じです。9th がルートの2度を1オクターブ上げた音だったように、11th は4度13th は6度を、それぞれ1オクターブ上げた音を指します。2度ずつ積み上げてきた続きが 11度・13度で、数字が大きいほどコードのてっぺんに乗る“高い彩り”の音、と考えてください。

メジャーコードの11thは“濁る”

ところが、ここに落とし穴があります。メジャー系のコードに、そのままの11thを足すと響きが濁ってしまう のです。理由は半音のぶつかり。Cメジャーの第3音はミ、11thはファで、この2つは隣どうしの半音。強くこすれ合ってうなりを生みます。こうして乗せると濁る音を アボイドノート(避けるべき音) と呼びます。

対処法はシンプルで、その11thを半音上げて ♯11 にすること。第3音との距離が広がって濁りが消え、かわりに透き通った浮遊感(リディアンの響き)が手に入ります。Fmaj7(♯11) が、その代表選手です。

つまずきポイント:「テンションは何でも足せばおしゃれ」ではありません。メジャーコードに素直な11thはNG。でも半音上げた ♯11 なら、途端に上品な浮遊感に変わります。ひと手間で正反対の結果になるのが面白いところです。

コードの種類ごとに、相性がある

では11thはいつも使えないのかというと、そうではありません。マイナー7thコードには、11thがごく自然に乗ります。Dm7の第3音はファ(短3度)、11thはソ。この2つは全音(半音2つ分)離れているのでぶつからず、すっきり溶け合います。Dm11 は、シティポップで大活躍のしっとりした響きです。

そして 13thがいちばん輝くのは、ドミナント7thの上。G7を G13 にすると、緊張感はそのままに、ぐっと豊かで色っぽい響きになります。「音で確認しよう」で、素朴な G7 → C と、テンションで彩った G13 → Cmaj9 を続けて鳴らしてみてください。同じドミナントからの解決なのに、後者のほうが何倍もおしゃれに“にじんで”響くのが分かるはずです。

ここが大事:テンションは「多いほど良い」ではなく「コードとの相性」で選びます。メジャーには ♯11、マイナー7thには 11、ドミナント7thには 13。この“相性”を、理屈だけでなく耳で覚えていきましょう。

第5章のまとめ

sus(第3音をずらす)、aug・dim(第5音をずらす)、m7♭5、そして 7th から 9th・11th・13th へ積み上げるテンション。第5章では、メジャー/マイナー以外の“コードの種類”を一望してきました。表で総ざらいしておきましょう。

コード種何をしたか響き・使いどころ
sus4 / sus2まん中(第3音)をずらす明暗を宙づり・浮遊感
augいちばん上(第5音)を半音上げる上へ浮く緊張・通り道
dim / dim7第5音を半音下げ、対称に積む不安定・半音の通り道
m7♭5m7の5度を半音下げるツーファイブの入り口・切なさ
7thルートから7度を積む緊張と解決の原動力
9th7thの上に2度を重ねる洗練・キラッとした色
11thさらに4度を重ねるマイナーは自然・メジャーは♯11
13thさらに6度を重ねるドミナント上で豊かに響く

どのコードも、暗記ではなく「どこをずらしたか」「何を積んだか」で理解できたはずです。次の 第6章 からは、ここで手に入れた道具を、実際のポップスの現場でどう使うか——スラッシュコードやパッシング・ディミニッシュといった、生きた技法へと進んでいきます。

🔊 音で確認しよう

ボタンをタップすると音が鳴ります。理屈と響きは、セットで覚えるのがいちばんの近道です。

QUIZ理解度チェック

習ったことを3問で確認しましょう。まちがえても解説ですぐ復習できます。

Q1.11th(イレブンス)とは、ルートから見てどんな音ですか?

解説:11thは4度(Cならファ)を1オクターブ上げた、コードのてっぺんに乗る色づけの音です。9thが2度を上げた音だったのと同じ発想で、その上にさらに積んだのが11th・13thです。5度や7度は下の土台の音で、役割が違います。

Q2.メジャーコードに、そのままの11thを足すのを避けたほうがよいのはなぜ?

解説:Cメジャーの第3音はミ、11thはファで、この2つは半音の隣どうし。強くこすれて濁るため“アボイドノート”と呼ばれます。対処は半音上げて♯11にすること。5度と同じ高さになるわけでも、ルートより低い音になるわけでもありません。

Q3.13th(サーティーンス)が特に豊かに活きるのは、どのコードの上ですか?

解説:13thはドミナント7thに乗せると、緊張感を保ったまま色気のある豊かな響きになります(G13→Cmaj9)。落ち着くべきトニックや、あくまで通り道のディミニッシュに乗せて活きる音ではありません。

EAR耳でチェック

音を聴いて答えるクイズです。何度でも再生できます。目をつぶって聴くと、響きの違いに集中できますよ。

Q1.いま鳴った“ドミナントからの解決”は、どちらでしょう?

解説:ドミナントに13th、着地に9thが乗ると、素朴なG7→Cよりも響きが厚く、都会的で色彩豊かになります。音の数が多く“にじむ”ように聞こえたら、それがテンションで彩られたG13→Cmaj9です。

BUILD進行を組み立てよう

コードをタップして順番に並べ、進行を完成させましょう。並べた進行は「▶ 聴いてみる」でいつでも試聴できます。響きを確かめながら組むのが作曲の第一歩です。

✓ クリア済みテンションで隅々まで彩った、おしゃれなツーファイブワンを作ろう

ヒント:ii → V → I の骨格に、11th・13th・9th の化粧

解説:Dm11→G13→Cmaj9。骨格はいつものii→V→Iですが、それぞれに相性のよいテンション(m7には11、V7には13、maj7には9)を乗せると、一気にジャズやシティポップの響きになります。