カリキュラム / 第3章 コード進行の力学 基礎
ケーデンス ― フレーズの“着地”の型
言い切る、まだ続く、意外な着地。コード進行にも句読点がある。解決の型を知れば、曲に区切りが打てる。
前回、コード進行は「家を出て帰ってくる」力の流れだと学びました。では、その流れの 着地の仕方 には、どんな種類があるのでしょう。文章に「。」や「、」があるように、コード進行にも区切りの型があります。それが ケーデンス(終止) です。着地の型を知ると、曲に句読点を打てるようになります。
終止は、フレーズの句読点
ケーデンスとは、フレーズの終わりで「どのコードから、どのコードへ着地するか」の型のこと。同じメロディでも、着地の型が違うだけで「言い切った」「まだ続く」「意外」といったニュアンスが変わります。ここでは、覚えておきたい代表的な4つを、耳で確かめながら見ていきましょう。
いちばん強い「言い切り」― V→I
最も強い解決感を持つのが、V → I(G→C)。前回学んだドミナントの“帰りたい力”が、まっすぐにホームへ叶う形です。文章でいえば力強い「。」。曲やサビの終わりで「終わった!」とはっきり感じさせたいときに使います。正式には 正格終止(せいかくしゅうし) とも呼ばれます。
いっぽう、同じ着地でも柔らかいのが IV → I(F→C)。こちらはドミナントほどの強い緊張がなく、おだやかに「そっと着地する」印象です。賛美歌の「アーメン」でおなじみなので アーメン終止、正式には プラガル終止 と呼ばれます。「音で確認しよう」で、V→I と IV→I を鳴らし比べると、同じ“終わり”でも強さがまるで違うのが分かります。
「まだ続く」と「意外」― 半終止と偽終止
着地させずに、あえて余韻を残す型もあります。フレーズを緊張の強い V(ドミナント)で止めて しまうのが 半終止。宙ぶらりんのまま「まだ続くよ」と感じさせる、文章の「、」のような役割です。
そしてもうひとつ、聴き手の期待を裏切る型が V → vi(G→Am)。Vのあとは当然ホーム(I)へ帰ると思わせておいて、そっくりな親戚の vi(Am)へ はぐらかす のです。これを 偽終止(ぎしゅうし) と呼びます。「音で確認しよう」でV→viを鳴らすと、「帰れると思ったのに、切ないほうへ逸れた」あの“おっ”という感覚が味わえます。J-POPのサビ終わりや大サビ前で、感情をぐっと揺さぶるために多用される仕掛けです。
ここが大事:ドミナント(V)の後に何を置くか。それだけでフレーズの表情が決まります。ホームへ帰れば言い切り、Vで止めれば余韻、viへ逸れれば意外性。作曲やアレンジで迷ったら、まずこの型を試してみてください。
まとめ
終止は、フレーズの句読点。V→Iは強い言い切り、IV→Iは柔らかい着地、半終止は「まだ続く」、偽終止(V→vi)は意外なはぐらかし。着地の型を持っておくと、曲の流れを自在に区切れます。次のレッスンでは、これらを組み合わせた 定番のコード進行 を、まとめて“形”で手に入れます。
🔊 音で確認しよう
ボタンをタップすると音が鳴ります。理屈と響きは、セットで覚えるのがいちばんの近道です。
QUIZ理解度チェック
習ったことを3問で確認しましょう。まちがえても解説ですぐ復習できます。
Q1.いちばん強い「終わった!」という解決感を持つ終止はどれ?
Q2.V → vi のように、解決すると見せかけてホーム以外へ着地する終止を何と呼ぶ?
Q3.フレーズをV(ドミナント)で終えて、あえて宙ぶらりんにする終止は?